新型コロナウイルス対策として、現金10万円を一律に給付する「特別定額給付金」の支給が遅れていることを受けて、高市早苗総務大臣が、マイナンバーと個人の預貯金口座を紐付けする方針を示したことが波紋を呼んでいます。
多くの国民が給付金を受け取れていない
政府は新型コロナウイルスで国民が大きな痛手を受けていることから、一律で10万円を支給するプランを策定しました。しかし支給業務が滞っており、多くの国民が給付金を受け取れていません。東京新聞が行った調査では、6月5日時点で支給が実施された世帯は2.7%にとどまっています。 政府は当初、5月中のできるだけ早い時期に支給すると説明していましたが、給付金の実務を知る関係者の間では「到底無理」という認識でした。今回の給付金は自治体が持つ住民基本台帳から世帯主と家族をリストアップし、申請書を印刷して郵送、返送された申請書を役所が確認し、支給決定通知書を郵送して(通知書を送らない自治体もあります)、その後、振り込みを行うという業務手順となっています。東京都を例に考えると、およそ1400万人の住民がいますから、リストアップだけでも相当な作業量となり、1カ月以内での振り込みは常識的に考えて不可能です。つまり、政府の当初説明が誇大だっただけであり、自治体の業務が著しく遅延しているわけではないと考えるのが自然でしょう。
セキュリティレベルの高いシステムが必要だが…
こうした中、高市氏は、今後の給付業務をスムーズに進めるために、マイナンバーに1人1口座の登録を義務付ける方針を示しました。確かに、マイナンバーと口座が紐付けられれば、今よりも給付業務が早くなるのは間違いありませんが、この制度は来年の通常国会を前提にしたもので、今回の給付金の支払いを早くするものではありません。現在は、マイナンバーはマイナンバー単体として管理されているだけですから、大きな問題は発生しませんが、仮にマイナンバーと銀行口座が連携されると、極めてレベルの高い個人情報を扱うことになります。もしこの情報が大量流出する事態となった場合、国民に計り知れない損失が発生しますから、この仕組みを構築するには、極めてセキュリティレベルの高いシステムが必要となります。 マイナンバーと口座の連携は以前から議論されてきたテーマではありますが、現状の給付金の支払いも出来ていない状況で、リスクの高い制度構築を拙速に打ち出すことについては、一部から疑問視する声が上がっています。当初、政府は国民が持つすべての銀行口座とマイナンバーを連携させる方針だったことも、反発を強める結果となったようです。 (The Capital Tribune Japan)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース